最強度近視(-20ディオプター)の多焦点眼内レンズ治療
本日の外来、手術も無事に終了しました。
今日は白内障手術は多焦点眼内レンズ、単焦点眼内レンズが2:1。
あとはラゼック治療3件、睫毛脱毛治療(睫毛電気分解)1件。
レーシック治療以外にも、ラゼック治療や眼内コンタクトレンズ(ICL)も地道におこなっています。
今日は先日おこなった近視度数がとても強い白内障手術の術後検診がありました。
度数は-21ディオプター。
-6ディオプター以上が強度近視、-10ディオプター以上が最強度近視と呼びますから、最強度近視のさらに倍、強い近視でした。
これだけ度数が強いと、眼鏡でも生活が厳しくなりますし、コンタクトレンズもハードコンタクトレンズ以外の選択肢がありません。
かといって、ハードコンタクトレンズは加齢とともにドライアイなどで装用困難になる方も多くなります。
今回は白内障によってさらに視力が出にくくなってきていましたから、屈折矯正も兼ねて白内障手術をおこないました。
患者さんと相談のうえ、遠くも近くもどちらも眼鏡など無しでの生活を目指して、多焦点眼内レンズを使用しました。
手術後4日目くらいでしたが、右眼は裸眼で1.2見えるまでに回復、近くも0.9くらい見えていますから、ほぼ眼鏡無しでの生活が可能になりました。
左眼はもともとの網膜疾患で遠見、近見とも0.6くらいが限界のよう。
それでも術前の裸眼視力0.02よりはかなりの改善を得られました。
球面度数も右眼はゼロ、左眼は-0.5ディオプターとまずまずの結果です。
これでしたら、レーシック等での追加矯正は必要ありません。
ちなみに、多焦点眼内レンズの性能を最大限に発揮するためにはいくつかの課題があります。
一番よくあるものは、近視や遠視、乱視等の残余屈折異常ですが、これらはレーシックなどで解決可能です。
他には術後早期にはドライアイなどによる見え方の質の低下ですが、こちらは点眼薬などのケア、それから、時間の経過とともに回復が期待できます。
そして、多くの多焦点眼内レンズの症例を経験するうちに、屈折に関与する部分は本来は少ないながらも、硝子体が術後の見え方に大きく影響を及ぼしてしまうことが時折あることを経験するようになりました。
今月号の日本眼科学会雑誌にも症例報告がありましたが、硝子体混濁が術後の見え方に影響を及ぼすことがあります。
そうした場合には、硝子体手術で混濁を除去すると、劇的に見え方の質が改善することがあり、今まで原因がはっきりと分からないと言われていた症例の中にも一定の割合で、硝子体混濁が関与している症例があると思われます。
低次収差に代表されるような屈折異常には問題がない場合で、明らかな硝子体混濁が存在する場合には、硝子体手術も解決手段として検討しても良いかと思います。
問題は、術前からそのような予測ができれば、最初から白内障、硝子体の同時手術を行う、ということも視野に入れていくことができるのでしょうが、硝子体混濁はそもそもほとんどの高齢者には大なり小なりあるもので、しかも、それなりに混濁があっても、必ずしも術後の自覚症状にそれが反映されるものでもなかったりしますし、そもそも白内障の混濁の後ろに存在する硝子体混濁は、術前の評価もやや難しかったりします。
現時点では、見え方の質がより重視される多焦点眼内レンズ手術を積極的に行うためには、術後に硝子体混濁が原因と考えられる見え方の不具合がある場合に備えて、硝子体手術を行うことができるように体制を整えておくのがベストなのかもしれません。