ロービジョン外来
ロービジョン外来の準備のために、埼玉県所沢市にある国立障害者リハビリテーションセンターに行ってきました。
最寄りの駅は、航空公園駅、そこから徒歩15分くらい。
航空公園駅、とあるからには、飛行機に縁があり、いまから100年くらい前の1911年に日本で初めて飛行訓練施設が作られた場所です。
ライト兄弟が初めて飛行したのが1904年ですから、そのわずか7年後に日本に飛行場が作られたのは驚きです。
駅前には公園のシンボルとしてYS-11型機が鎮座しています。
岐阜県にも市内に県立盲学校があるのですが、その歴史はかなり古く、明治初期に英国人によって創設されています。
岐阜県内の眼科でロービジョンに取り組んでいる施設はほとんどなく、唯一、大学病院で私も御世話になった先生が10年くらい前から一生懸命、地道に取り組んでいるのみ。。。
補助具などを使えばもっと、生活の質を上げられる方がたくさんいらっしゃるはず、なので、なんとか、視覚障害の方にもより多くの選択肢を提供できるようなクリニックにするための第一歩が今回の研修でした(視覚補助具の処方に必要な”視覚障害者補装具適合判定医”、という資格を取得しました)。
3日間をかけて、朝から晩までのみっちりと組まれた時間で、座学のみならず、実習も行います。
実習では特殊な器具を装用することで、遠近とも白内障等で0.1未満の見え方や、網膜色素変性症で片眼失明、片眼0.05の視野5度以内の求心性視野狭窄の状態などを体験し、実際に白杖(はくじょう)を使っての屋外での歩行訓練なども行いました。
器具は、ルーペや単眼鏡、拡大読書器など、様々な機器を使います。
拡大読書器は日本のみならず、アメリカやオランダ、中国など様々なメーカーが出しています。
今回、日本国内で利用できる代表的な拡大読書器をほぼ全て、試すことができました。
実際にクリニックで取り扱うとしても、全種類を揃えて試していただくことは現実的ではありませんから、今回、どの機種が患者さんの評判が良いかや、使用用途によってオススメの機種が分かったことも大きな収穫でした(新聞を読みたいのか、伝票等の書く作業に使うのかによっても適した機種がありますし、学校で授業を受ける際に近くだけでなく、遠くも拡大して見えるような機種もありました)。
同じ視覚障害といっても、視力障害なのか、視野障害なのか、その両方なのかによって、見えづらさは全く異なります。
それぞれの見え方を実体験することで、補助具の使い方でこんなにも見え方が異なるものなのか、と自分の感覚として体験し、また、現場の方々の声を聞いて、機器の特性や、視覚障害のタイプによってどの種類の補助具が適切か、いろいろと学ぶことができました。
遮光メガネもさまざまな種類を装用しました。
こちらは視覚障害の等級に関係なく、補助具としての申請が可能。
学校で使うテキストなども、いろいろと見せていただきました。
村上春樹の小説、1Q84もありました。
白黒反転での印刷、実際に、白黒反転が一番、見えやすいです。
ただ、この分量を読むのは、視野障害があると、かなり大変です。
写真はセンターのトイレ、小学生も見え方のトレーニングに来ていて、様々な状況の方が施設を利用されています。
視覚障害を持った方たちへの、地域の眼科医としての役割は、手術や投薬などの直接的な治療のみならず、適した補助具の処方やトレーニング、そして、福祉サービスにいかにうまくつないでいくか、です。
今回、福祉サービスでも、様々なものがあることを知り、また、参加したドクター同士のネットワークもできました。
残念ながら、岐阜からの参加は私ひとりでしたが、岐阜県内でのロービジョンへの対策が少しでも充実したものになっていくように、頑張ります。